なぜ自分は商品を購買してしまうのか『デジタルマーケティングの教科書―5つの進化とフレームワーク』を読んだ
主にデジタルマーケティングに関するプロジェクトにいることが多く、マルチチャネルなどのワードに触れることが多かったので、勉強のために読んだ。
この本はデジタルマーケティングについて、「環境分析」「消費者理解」「セグメンテーション」「チャネル」「プロモーション」などのワードをデジタルマーケティング前後でどう変わったのか、その変遷を記載してくれているので分かりやすく読み進めることができる。
今まで経験していた仕事でもよくチャネルが出てきていたので、チャネルとは何か、マルチチャネルとは何かということを理解できたし、購買行動についてよく話に出てきていた観点だったので勉強になった。
- 作者: 牧田幸裕
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: 単行本
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ただ、序章のこの先のデジタルマーケティングの未来想像に関するページは、最初に読むと敷居が高すぎるしポエムなので飛ばしていいと思う。
目次
序 章 20XX年のマーケティング―デジタルテクノロジーが実現する近未来第1章 デジタルマーケティングとは何か
第2章 従来型マーケティングの戦略策定プロセス
第3章 デジタルマーケティングの5つの進化とフレームワーク
第4章 マーケティングのキープレイヤーはどう変遷するか
第5章 デジタルマーケティング実践に求められる能力
デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングとは「データドリブン」と「オムニチャネル」。データドリブンとは、消費者理解と消費者へのアプローチを「勘」や「経験」ではなく、データに基づいて行う。
オムニチャネルとは、消費者と企業の接点であるECチャネルとリアル店舗をシームレスに統合し、消費者への購買の場を提供し、一方で、消費者購買行動データ取得の場とすることである。
シームレスとは、消費者から見てECチャネル(AMAZONなど)とリアル店舗の違いを認識・意識せずに一体的に利用できる状態。
このサイクルがデジタルマーケティングの根幹となる。
データドリブンによって商品やサービスをターゲット消費者へ認知させる
↓
消費者の購買前の行動データに基づいているので、興味・関心・欲求が醸成される
↓
購買
↓
購買データと購買後の消費者の評価データをもとに製品開発やサービス(新しい施策)開発の示唆を得る。
デジタルマーケティングの最終目標は消費者との関係性を深め、最終的に消費者のエージェント(代理人)になること。
評価データは、オムニチャネルとして、ECチャネルとリアル店舗から取得する。
じゃあどうやってデータドリブンする、つまり「勘」や「経験」ではなく、データに基づいて行うかというのかというと、ビッグデータだったりする。
仕事柄ビッグデータ分析用のデータレイク基盤を作っていることが多いが、大体はPOSデータが存在していることが多く、データ件数が一番多い。
1レシート単位で何を買ったかを1商品単位でレコードになっているからそりゃそうなんだけども。
POSデータには会員情報と紐づいていないものも多い。紐づいていないとそもそも上のサイクルに結び付けられないので、いかに会員情報とPOS情報を紐づけるのかというのが重要。
大体は会員カードだったりするんだけど、ECチャンネルで住所氏名年齢など消費者情報を入力していたり、購買履歴を持っていたりするので、それを使っている。
またGoogle Analitycsの情報などで、どこからアクセスしてきたのか、どのページに遷移していったのかなどを行動データをして持っている。
購買前の行動を分析いかに分析するのかというのがデジタルマーケティングのキモになってくる。
オムニチャネル
消費者と企業の接点であるECチャネルとリアル店舗をシームレスに統合ということだが、どこまでシームレスかっていうと、通常のユーザとして買い物している観点外の、在庫管理等のテクノロジーやサプライチェーン、ロジスティクスまで包含される。普段自分たちが、とりあえずアマゾンでポチるという行為がオムニチャネルの典型的パターンで、「消費者のエージェント(代理人)」となって商品を持ってきてくれる。
これをいかに自分の会社でやらせるかというのが、イオンでもセブンイレブンでもみんな同じようなサービスをやっている大本の理由だったりする。
サービスを利用してくれればしてくれるほど、会員の購買前行動を取得できるので、新しい製品やサービス(施策)開発がはかどる。
マーティング戦略の変遷
「環境分析」プロセス
⇒ターゲット消費者はだれなのか、製品・サービスの訴求ポイントの明確化
↓
「戦略立案」プロセス
↓
「戦略実行」プロセス
↓
「戦略管理」プロセス
⇒ターゲティングは適切だったか、競合製品・サービスの違いを消費者に適切に伝えられたか
このプロセスをPDCAのように回し続ける。
その中でも「戦略立案」プロセスは、さらに以下定義順で進んでいる。
セグメンテーション(市場細分化)
↓
ターゲティング(標的市場の選定)
↓
ポジショニング
↓
マーケティング・ミックス(製品戦略、価格戦略、チャネル戦略、プロモーション戦略)
従来型マーケティングの歴史
市場成長期(1960年、1985年)は需要量>供給量。消費者へ製品を届けることが重要視されていた。この時期の買い物は、休日みんなデパートに出かけるというハレの日という扱いだった。
そこからコンビニエンスストアが誕生して、ユーザと店の距離感が近くなっていく。
市場成熟期(2004年、2007年)になると、需要量>供給量となり、需要が伸び悩むようになる。
そこから顧客との関係性を重視し、需要を作り出すことがメインとなってくる。
〇「環境分析」プロセス
従来型の現状分析はPEST分析とSWOT分析がメイン。
PEST分析
政治的要因(Political)、経済的要因(Economical)、社会的要因(Sociological)、技術的要因(Technological)の頭文字を取ったもの。
マクロ環境の変化を網羅的に検討し、その変化が「自社の所属する業界」にどのような影響を与えるのかを明らかにするフレームワークであり、「変化」→「影響」→「成功要因の変化」となる。
上に書いている通り、あくまで「自社の所属する業界」に影響がありそうな事象をピックアップして分析する。
「変化」→「影響」→「成功要因の変化」を明らかにすることで、市場の脅威、機会を明らかにすることが、マーケティング環境分析の目的。
強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Theats)の頭文字をとったもの。
SWOT分析を使うことにより、マーケティング戦略立案における環境分析ステップで、自社の環境要因を考える視点を提供できます。SWOT分析のやり方としては、SWOT=強み、弱み、機会、脅威の4つを組み合わせて分析することで、自社にとっての、市場機会や事業課題を発見します。
SWOT分析のやり方とコツ:環境分析から戦略目標を引き出す方法 | 英数字 | マーケティング用語集 | 株式会社シナプス
SWOT分析を行うことで自社が参入を検討すべき魅力的な市場を見つけることができる。
〇「戦略立案」プロセス
①セグメンテーション
セグメンテーションは同質と見なしうるセグメントに分解することを言う。ある市場をMECE(抜けもれなく)に、適正規模に分解する。
だが、MECEにとはいえ、完璧に同質に分解することはできない。
セグメンテーションの目的は競合企業としのぎ合いをしながら、それでも、その特定市場(セグメント)でビジネスを成長させること。
あくまで、自社がビジネスを継続、成長できるだけの規模ではければならない。
②ターゲッティング
セグメンメンテーションで分割しなかで、将来成長する・測定可能・達成可能なものを選択して、ターゲッティングする。
先細りの市場に目を向けてもだめだし、消費者のニーズが測定できなければ、競争力のある製品やサービスが提供できないし、成長しそうなセグメントでもハードルが高すぎて達成できなければ意味がない。
③ポジショニング
ターゲット消費者に自社の製品・サービスと競合企業の製品・サービスの違いを理解してもらい、自社の製品を選んでもらうための工夫である。
ターゲット消費者のニーズを把握し、そこから自社の製品サービスの強みを訴求ポイントを明確にするのが重要。
〇「環境実行」プロセス
マーケティング戦略が正しいのか、まずは仮説を検証する。
期間限定や店舗限定の商品を出すことでテスト・マーケティングを行う。ターゲット消費者に適切にプロモーションが届いているのか、それが理解されているか、購買されているか、想定していたチャネルに来店しているのか、価格、製品・サービス満足度など多岐にわたるテスト項目で検証をされる。
従来型のマーケティングの限界
消費者理解にしてもセグメンテーションにしても、消費者属性を把握するためにデータが限られていた。それは、消費者購買行動をデジタルデータで取得できず、アナログデータで取得していたから。
セグメンテーションにしても同質だろうという曖昧な状態でセグメンテーションするしかなかった。
そこから個々の消費者購買行動をデジタルデータでビッグデータとして取得できるようになって、消費者理解やセグメンテーションは変わっていく。
デジタルマーケティングでの変化
変化とはいえ、デジタルマーケティングは従来型マーケティングと別物ではなく、従来型マーケティングを包含するものである。環境分析の変化
マーケティング環境分析では、未来を定義することから環境分析を行う重要性を検討する。
従来型ではPEST分析とSWOT分析をフレームワークとしていた。
ただこれらは自社に関わる因果関係の太さを持つ根拠を元に結論を導き出していく。
つまり従来型は、「過去」の変化を重視して未来予測をするということになる。
行楽時期はいつもおにぎりが売れているから、今後も売れているだろうみたいなノリ。
現在のような世の中の技術的変化が大きかったり、連続性がない場合、過去の変化がないのでPEST分析とSWOT分析が機能しなくなる。
ではどう未来予測するのかというと、まずは未来を定義するという考え方。そのうえでどうしたらその未来に対して因果関係が強くなるのかを考えるのがデジタルマーケティングの環境分析となった。
消費者理解
従来型のAIDMAから、AISASやZMOTに移り変わる。
AIDMA(アイドマ)とは1920年代にアメリカ合衆国の販売・広告の実務書の著作者であったサミュエル・ローランド・ホールが著作中で示した広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した略語である。日本語圏において「AIDMAの法則」として、2004年に広告代理店の電通等により提唱されたAISASとの比較等で日本では知られる
AIDMA - Wikipedia
購買決定プロセスとして以下の流れで購買させるフレームワーク。
注目(Attention)
⇒顧客はまだ知らないので知ってもらう
↓
興味(Interest)
⇒知っているが興味を持っていないので、評価を育成する。
↓
欲求(Desire)
⇒興味はあるがほしいと思っていない。
↓
記憶(Memory)
⇒欲しいと思ったことを忘れている。記憶の呼び起こし。
↓
行動(Action)
⇒購入動機はあるが購入機会がない。機会を提供する。
このプレームワークはまだデジタル環境が存在しない1920年代に提唱されたものなので、検索→即購買という即時性が想定されていない、心理の変化と購買行動にタイムラグのあるフレームワークとなっている。
〇AISAS
AIDMAが登場したのは1920年代ですが、そこから70年以上が経過して新たなプロセスが誕生します。それがAISAS(アイサス)です。AISASは日本の広告会社である電通によって提唱されたモデルで、AIDMAをインターネットが普及した時代に適用できるよう発展させたモデルといわれています。
AIDMA・AISAS・SIPS|マーケティングにおける購買行動モデルをおさらい | リクナビNEXTジャーナル
購買決定プロセスとして以下の流れで購買させるフレームワーク。
注目(Attention)
⇒顧客はまだ知らないので知ってもらう
↓
興味(Interest)
⇒知っているが興味を持っていないので、評価を育成する。
↓
検索(Search)
⇒購入前にgoogleなどで検索して商品やサービスについて事前調査を行う。
↓
行動(Action)
⇒購入動機はあるが購入機会がない。機会を提供する。
↓
共有(Share)
⇒購入した商品・サービスをブログやSNSなどで感想を投稿して情報共有する。
ここからわかるのが、製品やサービスに係る情報の入手が、検索サービスによって一瞬で可能になり、消費者が発信する口コミ情報が消費者の意思決定に大きな影響を与えているということ。
情報をどのようにして手に入れるかというのが、井戸端会議からインターネットへ。情報ソースの非属人化へ変化していった。
〇ZMOT
また、Gooleが提唱した意思決定プロセスのフレームワークとして、ZMOT(Zero Moment of Truth)もある。
「Moment of Truth(真実の瞬間)」が語源。
Moment of Truth(モーメント・オブ・トゥルース)とは直訳すると「真実の瞬間」で、顧客が企業と接点を持ち、購入の意思やブランドへのイメージを決定する瞬間のことを指します。
この「真実の瞬間」は誰もがインターネットを利用する現在では、顧客が来店などのファーストアクションを起こす前、つまりゼロの段階で起きているというのがZMOT理論です。
ZMOTとは? GoogleのWebマーケティング理論をわかりやすく解説!
セグメンテーション
従来型マーケティングは市場に存在する不特定多数の消費者を、ニーズや特性別の集団に分ける。
具体的な手法は、地理的変数、人口動態変数、心理的変数、行動変数の4つである。
デジタルマーケティングでは、消費者をある程度の集団ではなく、「個」としてみる。
なぜなら、消費者それぞれで興味は別でその行動(購買)と心理(Google Analytics等での回遊情報)を、ユーザIDに紐づけて理解しようとするから。
プロモーション
従来型マーケティングはセグメンテーションでも書いたようにニーズや特性別の集団に分けていた。
つまりテレビ等でのマスプロモーションが主体だった。
需要>供給の状況の時は、製品やサービスを市場に流すことが重要であり、視聴者に対しては認知が重要だった。
今は、供給>需要のため、認知だけでは消費者は購買行動に移さない。
「興味、関心、欲求」の情勢をプロモーションすることが重要になった。One to Oneプロモーションに移り変わってきている。
どのように実施しているという点もセグメンテーションと同様、行動(購買)と心理(Google Analytics等での回遊情報)を、ユーザIDに紐づけている。